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百名山と温泉の思い出
瀨川 隆二 (S47法)
 
私の山登りの楽しみに、登山後の温泉と湯上りのビールがある。そのために山に登るといっても過言ではない。ありがたいことに名山と温泉はセットになっている場合が多く、平成24年8月に達成した百名山の思い出は、当然に温泉の思い出と深く繋がっている。 
 
その双璧は、百名山の最後となったトムラウシ山・国民宿舎東大雪荘のトムラウシ温泉と北アルプスの剣岳・らいちょう沢ヒュッテの地獄谷温泉である。トムラウシ山は山麓の奥深さ、剣岳は峻険さで、最高に手強い山であったが、制覇した喜びと安堵感・達成感を野趣あふれる源泉かけ流しの湯によって、身体の芯から味わうことができた。
 
温泉としての客観的な評価は、その歴史と規模から八甲田山・酸ヶ湯温泉の千人風呂が一番と思うが、トムラウシ温泉で疲れ切った身体を癒し、剣岳での緊張からの地獄谷温泉での解放感は、最高の思い出となっている。 
登山後の定番の温泉として、南アルプスでは赤石温泉・白壁荘がある。百名山99番目の光岳の後に寄った時は立派な宿に改築されていたが、以前に赤石、聖岳などに登った時はボロながらそれなりの風格を持つ無料の立ち寄り湯で、タダで申し訳ないとサイダーやお土産を買った思い出が懐かしい。北アルプスでは新穂高に下山した後に平湯温泉の高速バスターミナル3階にある立ち寄り湯をバスの時間待ちを兼ねて利用した。風情はないがともかく便利である。  
そのほか、一日雨に打たれた後の十勝 岳温泉、岩木山の嶽温泉、雨飾山の小谷温泉の温もりは、登った山以上の思い出となっている。また、個性的な温泉として、開聞岳の山川砂むし温泉、越後駒ヶ岳や平ガ岳の帰路にある栃尾又ラジウム温泉、霧島山のラムネ温泉、戊辰戦争に巻き込まれた歴史を持つ那須岳の三斗小屋温泉などが思い浮かぶ。 
そして、黒部源流の雲の平には日本一遠いと言われる究極の秘湯「高天原温泉」がある。富山市に前泊し、薬師岳山荘と薬師沢小屋に二泊して、ようやくたどり着いた高天原山荘から約20分下ったところに混浴の露天風呂とベニアに囲まれた女風呂がある。管理人もいないし当然ビールも売っていないが、大自然の中の温泉を独り占めする喜びはまさに山の醍醐味であった。
帰路は黒部源流をひょいとまたぎ、三俣山荘に一泊して新穂高温泉に下山したが、高天原温泉のついでに薬師岳に登った感がするこの山行は、私にとって忘れられない山と温泉の思い出となっている。
 


 

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